泣きながら歩いたあの日の思い出

今でこそ、ある程度経験もあり度胸もあるおばちゃんになっている私ですが、こんな私にも若くてひたむきな時がありました。
真っ直ぐだからこそぶつかることもありました。

どのようにして気持ちを伝えるべきか分からずに、失敗してしまうこともありました。
頑張れば頑張るほど、空回りしたり出る杭になってしまったり。
それらもまた今となっては、確かに自分が歩いてきたこと。
自分の大切な財産になっています。
見た目にも気を付けて、美を追求していた頃もあります。
そんな私が街で一番人通りが多い場所を、大声で泣きながら歩いて病院に行ったあの日のこと。
誰に見られても、どうしても涙を止めることができなかったあの日の思い出。
悲しくて悔しくて情けなくて。
20代半ばの女性は、ただただ泣きながら歩いていました。
体調の悪さに仕事を早退し、歩いてたどり着いた病院で、点滴を受け終わるまでずっと泣いていました。
治療が必要だったのは、果たして体だったのか心だったのか。
そんな私に、看護師さんは一言言いました。
「泣きたい時もあるよね」と。
その時はいっぱいいっぱいで何も気が付かなかったけど、あれはあの看護師さんの精一杯の温かい慰めの言葉だったのだと思います。
きっと、私の尋常でない様子に何かを感じたのでしょう。
その日の辛さはもう薄れていて、以前のように激しく私を苦しめるような事は無くなりました。
人はそれを強くなったと言います。
あるいは、図太くなったのだと言います。
これが生きるという事なのか、それとも私に運が無かっただけなのか。
今はただ懐かしくあの日の事を思い出しています。